1979年9月発行 池沼植物の生態と観察―おもにため池について(グリーンブックス 55), 110 pp., ニュー・サイエンス社 ----- 浜島繁隆

  •  本書では、干上がったり、満水になったりする水位の変動の激しい「ため池」を生き抜く水草の能力を紹介している。例えば、根を泥に定着させて水面に葉を浮かばせるヒツジグサ、ジュンサイ、ガガブタなどの浮葉植物(ふようしょくぶつ)は、浮葉が水没すると、総光合成速度は3%に、呼吸速度は50%に低下すると言う(Ikushima 1970)。そのため、浮葉植物は驚くべき早さで葉茎を伸張(測定例:ガガブタやヒメシロアサザ の葉茎、0.5cm / 時)し、葉を水面に浮かせる。この能力は陸上植物ではあまり見られないという。一方、葉が水中にある沈水植物(ちんすいしょくぶつ)は、陸上植物に比べて、葉から水分が発散するのを防ぐためのクチクラ層が葉の表面に発達しておらず、簡単に萎れてしまう(測定例:沈水葉のヒメコウホネ、植物体水分の75%が減少)。そこで、ヒルムシロ、ヒメコウホネ、タチモ、キクモ、ミズスギナ、オオフサモなどの沈水植物は、水位が低下して、植物体が水面に出ると、その後に展開する葉は水分発散に比較的強い空中葉を形成する能力を持つ。
     その他、沈水植物の受粉の仕組みの多様性、ため池での生息範囲をめぐるヨシ対マコモやガガブタ対ヒシの種間競争、他の水草とは一線を画するエビモの特殊な生態など、水草各種の生態に魅了される。筆者は長年の水草相の調査の中で、多くのため池の水質が悪化するのを目撃しており、水草相がどのような末路を辿るのかを克明に記載している。全国で富栄養化が進むため池であるが、秋田県や津軽地方のため池は、ヒツジグサ、ジュンサイ、タヌキモの生える貧栄養なため池が多く存在するといい、一度、その土地を訪れてみたくなる。ため池の水草を研究する手法の記述も今も色褪せることのない貴重な情報源である。

    (紹介されている水辺の生物の生態)

    ・全国各地に分布域を持つ種のほぼ全ての水草
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